プラスチックの衛生性

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プラスチックの安全性


「安全」の定義をプラスチックに適用すれば

プラスチックの安全性に漠然とした不安を抱いておられる方は、プラスチック製の包装や食器から何か有害な物質が食品中に溶け出してきて、私達の健康をおびやかしている ― そのようにお考えではないでしょうか。プラスチックから何かが溶けてくるのかこないのかと聞かれれば、―般論としては、きわめて微量だけれども溶けてくる場合もあると答えざるを得ません。それでは、やっぱりプラスチックは危険なのかと考えるかもしれませんが、ちょっとお待ちください。それは早計なのです。

「安全とはどんなことでしょうか?」で述べた「安全を確認する方法」についてもう一度思い出してみてください。

「どんな物質にも毒性があるが、許容摂取量より少ない量を摂取しているかぎりにおいては人の健康に影響がない 」

これが「安全」ということでした。

ですから、プラスチック製の包装や食器から何かが食品中へ溶け出してきたとしても、その量がその物質の許容摂取量以下であれば、実際には安全なのです。

分析化学が驚異的発達を遂げた現在は、以前ならばゼロと見なされていた超微量の物質でも検出できるようになりました。ppmとかppbといった単位をご覧になったことがあると思いますが、これは、このような超微小の量を表わすのに用いられます。おかげで、プラスチックの中の成分が溶け出してくることが検知されることになりましたが、溶けてきた量が許容摂取量よりはるかに小さいことはいっさい考慮せずに、溶けてきたというだけで危険と短絡的に決めつけるのは合理的とはいえません。

プラスチック製品からどんな物質が溶け出すのかという説明は後にまわして、プラスチックの安全性の確認についての基本的な考え方をまず説明しましょう。

すでに触れたように、プラスチックの包装や食器から食品中に溶け出して、人間が摂取することになる量が、許容摂取量を超えないこと―これがプラスチックの安全の基本になるわけです。許容摂取量は、実験動物を用いた毒性試験から安全係数を掛けて決定されるわけです。

「プラスチックの安全性確認のためには、
各国とも亜急性毒性試験により許容摂取量を決めることを一応の原則にしています。」

一般に、プラスチック製品から食品中に溶け出す量は、食品中の食品添加物に比べてはるかに少ない量ですが、動物試験による許容摂取量(耐容摂取量)と溶出量から得られる推定摂取量による評価により、実際上十分な安全性が確保できるわけです。このくらい少ない量なら、毒性試験をやるまでもないという意見もあるくらいです。

それでは、にプラスチックからどんな物質が溶け出してくるのか、
それらの物質の毒性はどうなのかということについて説明します。


プラスチックから何が溶け出すでしょう

このホームページでは、プラスチック製品ができるまでの過程を説明しています。モノマーが1000~数万個も結合してできたポリマーを主成分として、これに必要とする添加剤を加えたものがプラスチックでした。モノマーが1000~数万個も結合するといっても、実際には結合し損なってモノマーのままでとどまっているものや結合数の小さいもの(オリゴマーといいます)もあり、これらの一部は製品にも残ったりすることがあります。

ですから、プラスチック製品中に存在する物質は、プラスチックの本体であるポリマーと意図的に加えた添加剤、それに場合によっては反応せずに残った原料のモノマー、又はオリゴマーです。つまり溶け出してくるのは、このような成分であって、格別怪しげな成分が溶け出してくるのではありません。それでは、これらの成分の毒性はどうなのか。溶け出してきても安全かどうか、順番に説明しましょう。 プラスチック製食品用器具および容器包装の製造から使用まで


[ 1 ]
ポリマーの安全性

プラスチックの本体ともいうべきポリマーは、一般に食品に溶けにくく、人間が食べたとしても腸で吸収されずにそのまま排泄されるので、障害はひき起こされません。ポリマーが不活性で、そして、モノマーが1000~数万個も結合した巨大な分子であるためです。

実際、主要プラスチックについての動物実験で、下表のとおり確認されています。ですから、ポリマーの安全性は、実際上十分であるといえます。
ポリマーの種類 毒性試験
分類 内容
ポリエチレン 短期

短期
  • ・ラットおよびマウスに13週間2400mg/kg体重の量を投与したが何ら毒性
    効果は認められず。(ポリエチレンはヘプタンに溶ける成分のみを投与した。)
  • ・ラットに90日間1.25、2.50および5%含む食餌を投与、成長、各種器官重量、組織検査に異常は認められず。
ポリプロピレン その他 ラットに経口投与しても、体内にまったく認められず、完全に体外へ排泄されることを確認。
ポリスチレン 短期
長期
がん原性
  • ・経口ラット飼料中に4%配合し、55週間投与したが影響なし
  • ・経口ラット飼料中に5%配合し、2年間投与したが影響なし
  • ・IARCのグループ3(人に対する発がん性は評価できない)に分類されている。
ブタジエン樹脂 短期

短期
  • ・急性経口毒性試験:ラットに14日間投与。剖検の所見では何ら著しい病理的変化は認められず。LD50=15,000mg/kg以上
  • ・亜急性経口毒性試験:ラットおよびビーグル犬に90日間投与(投与水準:飼料中600、2,000、6,000ppm)全ての投与水準において、何ら異常は認められなかった。
ナイロン6 短期 ラットに、10%の微粉末状のナイロン6を含ませたかゆ状飼料を8週間自由摂取させたが、中毒症状を示さず、繁殖機能は正常で対照動物との間に差は認められなかった。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂) 短期 雌雄のラットおよび犬に対し、ポリエチレンテレフタレートを10%含有する飼料を自由摂取させて3ヶ月間飼育したところ、異常は認められなかった。
ポリカーボネート 短期 雌雄の幼若ラット各30~40匹に、微粉化したポリカーボネートを6%含む粥状の飼料を自由に摂取させ、8週間飼育した。その結果、体重増加の低下は認められなかった他、血液像、X線検査においても病的な所見は見られず、病理解剖、臓器の組織検査も正常、また、生殖機能も正常であった。また、成熟した雄のラットに同じ飼料を4週間与えたが、酸素の消費量は4週間正常であった。
ポリビニルアルコール樹脂 短期
変異原性
  • ・経口ラットLD50=2,000mg/kg以上
  • ・変異原性なし
フッ素樹脂 短期 PTFEを25%加えた飼料を、雄と雌のラットに90日間投与しても、生長速度、挙動、組織の顕微鏡所見に変化なし。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂) 短期 ラットにPBTを投与した場合の尿中の4-Hydroxybutyric acid(4-HBA)、4-Butyrolactone(4-BL)の調査食餌中に5%のPBTパウダーを投与したラットの尿の同定を行った結果、5~6日間の投与で、4-HBAのわずかの増加は見られたが、重要な増加は見られなかった。

[ 2 ]
添加剤の安全性

学校給食用のポリプロピレン製食器から酸化防止剤のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が溶け出すというセンセーショナルな報道が行われたことがありましたので、添加剤に不安を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。下表に食品用プラスチックによく用いられる主要添加剤についての毒性データの例を示します。

LD50というのは、毒性の大小の目安としてよく使われる量で、投与した時に実験動物の半数が死亡する量を表わします。食品添加物としては、LD50が2g/kg以上の毒性の弱い物質を用いるべきだという専門家の提言がありますが、食品用プラスチックに用いれている主要添加剤の大部分は、この条件を満たしていることが、ご理解いただけるでしょう。

さきほどは、プラスチック添加剤の許容摂取量は亜急性毒性試験から決めるのが一応の基準であると説明しましたが、実際には、資料18に示すように、使用頻度の高い主要添加剤の多くについては食品添加物なみに慢性毒性試験がなされて安全性が再確認されています。添加剤の大部分は、水にはほとんど溶けませんが、油には比較的溶けます。しかし、プラスチックに添加される量は充填剤を除いて微量です。またプラスチック製の容器包装は、一般的には水系の食品を主体に使用されます。したがって、溶け出してきたとしても、その量はきわめて微量で許容摂取量を十分に下まわっていますので、実際上十分に安全といえます。

添加剤名称 LD50
(急性毒性)
毒性試験 人間の
許容摂取量
(ADI)
分類 内容
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT) 1.7~1.9g/kg
(ラット)
長期
その他
長期毒性試験、繁殖、催奇形性試験、変異原性試験等多くの試験がなされている。 0.125mg/kg/日
3,3’-チオジプロピオン酸ジラウリルエステル 2g/kg以上
(ラット)
長期

その他
  • ・ラットに2年間、0.5%、1%、3%の濃度で投与、異常を認めず。
  • ・突然変異誘発性認めず(微生物)
3mg/kg/日
3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリルエステル 2g/kg以上
(ラット)
長期

その他
  • ・ラットに2年間、0.5%、1%、3%の濃度で投与、異常を認めず。
  • ・突然変異誘発性認めず(微生物)。
3mg/kg/日
3,3’-チオジプロピオン酸ジミリスチルエステル   その他 突然変異誘発性認めず。 1mg/kg/日以上
テトラキス〔メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート〕メタン 5g/kg以上
(ラット)
長期 ラットに2年間100mg/kgの量が投与され、発が
ん性や子孫に対する影響認めず。
1mg/kg/日以上
n-オクタデシル-β-(4’
-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート
15g/kg以上
(ラット)
長期

その他
  • ・ラットに2年間5mg/kgの量が投与され、発がん性や子孫に対する影響を認めず。
  • ・突然変異誘発性認めず(微生物)。
1mg/kg/日以上
4,4’-ブチリデンビス(6
-t-ブチルメタクレゾール)
17g/kg以上
(ラット)
短期


その他
  • ・ラットに90日間投与したところ、0.05%では肝臓脂質の浸潤が見られたが、0.005%では何らの毒性効果も示さず。
  • ・突然変異誘発性認めず(微生物)。
0.005mg/kg/日
1,1,3-トリス(2’-メチル
-4’-ヒドロキシ-5’-t-ブチ
ルフェニル)ブタ
2g/kg以上
(ラット)
その他 経口投与しても組織に吸収される量は2%程度。 0.05mg/kg/日
1,3,5-トリメチル-2,4,6
-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチ
ル-4’-ヒドロキシベンジ
ル)ベンゼン
5g/kg以上
(ラット)
短期 ラットに90日間1%含む餌を投与、何らの毒性効 果も認めず。 1mg/kg/日
エポキシ化大豆油 28.7g/kg
(ラット)
長期



長期
  • ・ラットに2年間、0.1、0.5、1、2.5、5%含む 餌を投与、1%以上では初期の成長が遅れ、2.5%以上では器官重量が増す。組織学的試験では何の異常も認めず。
  • ・その他同様の実験あり。
1mg/kg/日
ステアリン酸カルシウム 5g/kg以上 (ラット)   (安全と思われる) 1mg/kg/日

[ 3 ]
モノマーおよびオリゴマーの安全性

モノマーは一般に気体、ないし気化しやすい液体であることが多いため、モノマーを製造したりモノマーからポリマーを製造したりする石油化学工場では、作業員が、微量とはいってもプラスチックから溶け出すよりは、やや多いモノマーを吸収する恐れもあるため、長期毒性試験や特殊毒性試験が、国の枠を越えて各国の有志企業の共同事業として実施されています。

多くのモノマーやオリゴマーについては、従来から、多くの毒性データがあり、毒性試験の結果や溶出量により、食品容器包装材料としては十分に安全なレベルに管理されているといえます。

食品用のプラスチックの主要なものについて、モノマーがどれだけ残留しているか、あるいは食品中にどれだけ溶け出すか検討されています。例えばポリスチレンから溶け出すスチレンモノマーの量は、許容摂取量よりはるかに低く、問題となるレベルではありません。

添加剤名称 LD50
(急性毒性)
毒性試験
分類 内容
エチレン   変異原性
  • ・窒息以外に毒性作用はないと考えられている。
  • ・大腸菌および数種の枯草菌では見られない。
プロピレン 窒息以外に毒性作用はないと考えられている。
スチレン
  • ・5,000mg/kgラット経口
  • ・316mg/kg
    マウス経口
がん原性
  • ・疫学調査及び動物実験がそれぞれ10件近く行われているが、 明らかに発がん性が認められたという報告はない。
  • ・IARCはスチレンを2B(人に発がん性があるかもしれない)分類しているが他の主要機関(NTP、EPA、BC、ACGIH)では発がん性に分類していない。
塩化ビニル 短期








長期
  • ・塩化ビニルの経口投与による動物実験については、オランダの中 央食品栄養学研究所で行われたラットに対する研究報告がある。
    大豆油中に溶解し、0、30、100、300mg/kgを胃中に注入、1回/日、6日/週、13週間投与の亜急性毒性試験を行った。最高投与量の場合体重に対する肝臓の重量比はわずかに増加していたが、組織学的、酵素化学的および電子顕微鏡的所見からみて、この増加は有意差とは認められないとの所見が述べられている。
  • ・使って行った経口投与の実験では総数320匹のラットを4群に分け、体重1kgあたり0、3.33、16.65、50mgの塩化ビニルをオリーブ油に溶かし、これを1回/日、4~5日/週、1年間胃内に注入した実験で、高濃度の50mg群では80匹中11匹に腫瘍が発生したが、低濃度の3.33mg群では腫瘍の発生は皆無であった。また、600匹のラットを使って0.03、0.3、1.0mgを2年間投与し5ヶ月後に観察した結果では、腫瘍の発生は全く発見されなかった。
カプロラクタム
(ナイロン6)
1,750mg/kg
ラット経口
短期
長期
ラットに100mg/kg/dの割合で2年間投与したが、対照動物に比べて寿命、体重、器官重量、血液、組織において差は認められなかった。通常の経口投与では、急性、慢性ともに低い物質として知られている。
アジピン酸
(ナイロン66)
3,600mg/kg
ラット経口
 
ヘキサメチレンジアミン(ナイロン66) 750mg/kg
ラット経口
 
テレフタル酸 18,800mg/kg
ラット経口
長期




短期
  • ・ラットに対し、テレフタール酸を1%含有した飼料の2年間連続投与において、異常は認められなかった。2%含有飼料で、雄に成長率低下が5%含有飼料で両性に成長率低下と死亡率増加が認められた。しかし何れのレベルにおいても腫瘍成形の徴候はなかった。
  • ・Ames試験ネガティブ
エチレングリコール
(BG)(PET樹脂)




テレフタル酸ジメチル
(DMT)
14,400mg/kg
ラット経口




2,000mg/kg
白ネズミ経口
長期





変異原性
  • ・最低3年から最高9年に亘りイヌに対し235~400mg/kg/日のエチレングリコールを与えたがなんら腎臓の病変を認めなかった。ラットに対し、EG0.1~4%を含む飼料を投与すると 0.5%~雄に腎臓の石灰化、シュウ酸含有結石1.0%~雌に腎臓の石灰化4.0%で飼育された雌はシュウ酸含有結石は認められなかった。
  • ・Ames試験ネガティブ
1,4-ブチレングリコー
ル(PBT樹脂)
800mg/kg
ラット経口 260mg/kg
モルモット経口
短期



発がん性
  • ・DMT1%含有した飼料で90日間飼育されたイヌには体重の減少以外には異常は認められなかった。0.5~1.0%含有した飼料で飼育されたラットは、離乳期の仔の体重がやや低いが、妊娠率や仔の死亡率には影響がなかった。
  • ・飼料中濃度0.25~0.5%ではラット、マウスにがん原性を示さなかった。
ホルムアルデヒド
(POM樹脂)


2,920mg/kg
ラット経口
短期



人への作用影響として毎日22~200mgのホルマリンを水にとかして13週間飲み続けても、のど、胃に不快感を生じる以外影響はなかったとの報告がある。なお、OSHAでは発癌性物質として分類されている。
酢酸ビニル 長期



長期
  • ・1000〜2500mg/l含有飲料水を100週投与、発がん性の疑いが観察されたが、ニトロベンゼン(500ppm含有:重合禁止剤)の影響も無視できないと言われている(経口ラット)
  • ・含有飲料水を2年間投与、臓器の損傷または投与に起因する発がん性も認めなかった
ビスフェノールA
(PC)
3,250mg/kg
ラット経口

2,500mg/kg
マウス経口
  ビスフェノールAは弱い急性毒性を示す。
亜急性毒性:ビスフェノールAを0.6%を含む粥状の飼料を与えた結果、体重増加の抑制が観察された。しかし、血液像、X線検査、病理解剖等の結果は正常であった。
雌雄各10匹のマウスとラットに対する13週間の毒性試験が報告されている。ラットはビスフェノールAを250~4000ppm添加した餌を与えられた。その結果、1000ppm以上の投与群で体重増加の抑制が起こった。又、雄のラットで膀胱にガラス状の塊ができた。(ラットの雄に特有の現象)。なお、雌の250ppm投与群以外で盲腸に腫瘍が起こった。
一方、マウスでは5000~25000ppmのビスフェノールAを添加した餌が与えられた。体重増加の抑制が、雌は5000ppm、雄15000ppm以上の投与群で起こった。雄の全投与群で巨大肝細胞が発生した。
14Cを用いてビスフェノールAの代謝が調べられている。その結果、ビスフェノールAは部分的に生体に吸収されるに過ぎないことが確認された。28%が吸収され、主にグロン酸抱合体の形で排泄される。56%はそのまま、又は水酸化物及びその他の形で糞便中に排泄された。
雌雄各15匹のラットに100~2500ppmビスフェノールAを含む飼料を13週間与えた。2500ppmの両性、500、100ppmの雌に脱毛症が発生した。2500ppmの雌の白血球が増加した。また、消化の悪いものを摂取したことが原因と思われる盲腸の膨張が、2500ppm投与群と500ppm投与の雄に認められた。
フェノール 3,200mg/kg
以上ラット経口
  有毒
メラミン 1,600mg/kg
マウス経口
毒性は弱い